アイデンティティ

診断されて2年ぐらいは、アイデンティティ=アスペルガーな自分だった。仮のものだとは思っていた。それまでアイデンティティらしきものを内側に意識できなかったので、それを見つけるまで一時的にアスペルガーアイデンティティにしているのだ、と。


その頃アスペルガーの館の掲示板で、アイデンティティの話題が出ていた。私も書き込んだ。その時に気になっていた人が「アイデンティティはその人の本質を指すもの」というようなことを言っていた(はっきりとは覚えていない)。私がその人の書き込みを読んで自分のことを振り返って思いついたキーワードは「情報屋」だった。その頃MLの管理人をしていて、発達障害に関連する情報や本の話題、考えたことを投稿するのを楽しみにしていたことと、診断前1年に得意でやっていたことが情報の発見と整理に関するものだったからだと思う。


その後、アスペルガーな自分というアイデンティティは、二次障害の悪化と診断への疑問という形で一旦崩壊した。時間が経って、改めて自分の中に自閉の要素を発見し、再び専門医を訪れて、自分のアイデンティティの今度は一部として獲得したのがこの夏。自分の内側を探って、当面の課題として発達障害ポータルサイトを作ろうと思ったのはその直後。


私は再び「情報屋」というキーワードを意識することになった。今度は実際に行動してみて一応の成果物があるというおまけ付き。サイトを1つ作ったことでかすかな自信も生まれたし、次の課題も発見できた。そして今日、これまでやってきたことを一言で言い表せるキーワードを新たに再発見(?)した。


診断後、これで生活もうまくいってハッピーエンド、とはいかなかった。二次障害ももう起きないかと思っていたのに2回も悪化した。私の場合、診断前に多くの可能性を持っていて、いろいろと失った後でそれと引き換えのように診断を得たので、どうしても診断にしがみつく傾向があるし、「もしあの時うまくいってたら」というようなことを考えてしまいがちだ。
でも結果的にアスペルガーというキーワードを通して、自分の本質にリンクしたキーワードを見つけた。あのままうまくいってたら見つけられたかどうかわからない。


11月末から苦しかった。過去と向き合って人と関わっていろいろ考えた。だから今日のことはギフトだと思おう。そういえば、今日こんな本を読んだ。人生において「出会った」と思える本の1冊。きっとこれもギフトなのだろう。


わたしを離さないで
わたしを離さないでカズオ イシグロ

おすすめ平均
starsこの物語に出会えたことに感謝
stars現代科学文明への批判ではなく、生きることに真摯であるかどうかを問いかける小説として読む
stars主人公の視点の背景を考えさせられる
stars哀しく心に響く
stars無慈悲で、残酷な世界

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とりあえず、発達障害ポータルサイトのリニューアルと、新規ポータルサイトの立ち上げが目標。こちらは仕事につながるかもしれないので、しっかりやらないと。3ヶ月ぐらいかかるかな?